(雑誌『クダハ時報 七月号』より抜粋)
 
 〝怪奇 死者蘇生の謎〟──深夜の墓地で一体何が?
 去る五月某日、奇妙な事件が起きた。トゥカナの町にほど近い墓地から、遺体が掘り起こされたというのである。
 近くに住む人はこう証言する。
 「私は墓守と親しくさせてもらってるんですけどね、あんなにたくさんの死体が──しかも一晩で──掘り起こされるなんて、ちょっと信じられないんですよ。一人二人じゃないんです。(たくさん?)えぇ、そりゃもう。なんというか、棺がね、内側から破られてるんです。ありえないでしょう?それが何体もあるんですよ……。かわいそうに、墓守の旦那は自分がしっかり見回ってなかったからだって、ずっと自分を責めてて。近所の人たちは、兵士たちが戦争を続けたがってるんだってまことしやかに囁いてました。そういう怪談めいた話も出てきてますよ」
 棺から出ていた遺体は全部で八体。そのうち二体は白骨化していたと言う。更に信じがたい事実がある。
 「子供がいたんですって。(どんな子供ですか?)さぁ……私が見たわけじゃないから詳しくないですけど、5歳くらいだったそうですよ。なんでもその死体たちの真ん中ですやすや眠っていたとか……異常でしょ?まさかあんな小さな子が棺を掘り起こせるはずないですから。その子が起きた時、なんて言ったと思います?『(遺体と)遊んでもらってた』って……そう言ったらしいですよ。それでもう、近所の人たちも怖がっちゃって」
 一体どんな事情があって遺体は掘り起こされたのか。子供はなぜ墓地にいたのだろうか?
 何かわかれば追って報告したい。

 (新聞『ルマ・ポスト 十月三日』三面記事より抜粋)
 トゥカナ町ロイエル区の住宅で、二日午後十時すぎ、女性が何者かに襲われ倒れているのを、近隣の住民が発見した。直前に悲鳴や物音が聞こえたことや、息子のイーニアス君(五歳)が行方不明になっていることから、警察は事件性があるとみて捜査している。

 (ナトゥール研究所保管資料 〝被験者590-T33のレポート〟より抜粋)
 ……被験者590-T33(以下T33)の特性として、蘇生能力があげられる。一般的に死亡したとみなされる生命体のほぼすべてを、なんらかの作用により生命活動中の状態へと戻すことができる。
 T33の肉体年齢をふまえると、この能力は訓練によって更なる向上が見込まれる。現段階において、成人男性の蘇生時間はおよそ十五分が限界である。しかし戦場での効力は十分発揮できるものと見込まれる。前線で味方を蘇生させれば、その間一人~三〇人あまりの敵を抹殺できると試算される。
 (走り書きにて)我が軍に栄光あれ。T33の能力は、必ずや勝利に貢献できるだろう!

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